電気工事士の技能試験は、候補問題を何度か練習しておけば手が動くようになります。だからこそ、「これは見たことがある問題だ」と思った瞬間に、少し油断しやすい試験でもあります。
でも、本番で怖いのは作れないことだけではありません。形は完成しているのに、欠陥があって不合格になること。これがいちばん悔しいんですよね。
技能試験では、第一種・第二種ともに、作品に欠陥がないことが合格の条件です。いま確認すべきなのは、電気技術者試験センターが公表している公式資料です。
まず読んでおきたい公式PDFはこちらです。
この記事では、公式PDF「欠陥の判断基準」の番号に合わせて、不合格につながりやすいポイントを整理します。見直しのときも、公式資料と照らし合わせやすいはずです。
目次
1. 未完成のもの
まず大前提として、作品が完成していなければ合格できません。取付枠の付け忘れ、接地線の結線忘れ、器具がつながっていない状態などは、公式資料の「未完成のもの」に当たります。
練習では、最初から速さだけを追わなくて大丈夫です。ただ、本番では制限時間があります。2026年3月更新の「技能試験の概要と注意すべきポイント」では、第一種の試験時間は60分、第二種は40分と案内されています。時間は変更される場合があるので、受験案内でも必ず確認してください。
本番では、最後の数分を見直しに残すつもりで作業しましょう。完成してから欠陥を直す時間がない、という状態はかなり危ないです。
2. 配置、寸法、接続方法等の相違
技能試験の準備として、13種類の候補問題を何度も練習した人は多いと思います。ここに落とし穴があります。解説本や練習動画で見た施工条件と、実際の試験で指定される施工条件が異なる場合があるからです。
たとえば、次のようなところですね。
- ジョイントボックス内での接続方法が、リングスリーブなのか差込形コネクタなのか
- 配線遮断器やランプレセプタクルなどが端子台で代用される場合の、L(非接地)やN(接地)の配置
- 配線図で指定された器具や電線の種類
- 寸法が配線図と大きく違っていないか
問題用紙を開いて「あっ、これは得意な問題だ!」と感じることもあるでしょう。そこで思い込みで手を動かすと危険です。
公式PDFでは、配線や器具の配置違い、寸法が配線図の50%以下になったもの、電線の種類違い、接続方法の施工条件違いが欠陥とされています。まず施工条件に線を引く。複線図に反映する。使う材料を一度見比べる。このひと手間で、あとからの迷いが減ります。
3. 誤接続、誤結線のもの
作品の見た目が整っていても、回路が違っていれば不合格につながります。スイッチから負荷へ行く線、電源からコンセントへ行く線、接地側と非接地側の流れ。ここをなんとなくで進めるのは危ないです。
2026年3月更新の「技能試験の概要と注意すべきポイント」でも、技能試験で重視する能力として、回路を的確に構成すること、配線図や施工条件を理解して守ること、接続作業を的確に行うことが挙げられています。
複線図を描くときは、「この線はどこから来て、どこへ行くのか」と自分に聞きながら進めると、丸暗記よりミスに気づきやすくなります。
4. 電線の色別、配線器具の極性の相違
電線の色別は、施工条件に従います。電源の接地側に白、非接地側に黒、接地線に緑など、よく見る組み合わせでも、必ず問題文で確認しましょう。
「いつもこうだから」で進めるのは危険です。
コンセントや引掛シーリングなど、極性を意識する器具では、接地側と非接地側の取り違えが欠陥につながります。複線図を描くときに色まで書き込んでおくと、作業中の迷いがかなり減ります。
5. 電線の損傷
技能試験では、電線の傷も見られます。ケーブル外装の損傷、絶縁被覆の傷、心線が折れるほどの傷、より線の減線などです。
ストリッパーや電工ナイフは、慣れるまで力が入りすぎます。急いでいるときほど、刃を深く入れてしまうんですよね。
練習では、端材を使って被覆を剥く感覚をつかんでおきましょう。きれいに剥く練習は地味ですが、本番でかなり効きます。なお、公式資料では近年カッターナイフでけがをする受験者が増えているとして、カッターナイフの使用自粛にも触れています。安全面でも、普段から使い慣れた工具で練習しておきたいところです。
6. リングスリーブによる圧着接続部分
リングスリーブは、技能試験でミスが出やすい作業の代表です。電線の太さと本数に合わせて、スリーブの種類と圧着マークを選びます。
公式基準では、リングスリーブの選択ミス、圧着マークの不適正、スリーブの破損、1つのスリーブに2つ以上の圧着マークがあるもの、心線の端末処理の不備などが挙げられています。
特に迷いやすいのが、丸マークにするのか、小にするのか。ここは感覚で決めず、練習の段階から表や教材で確認して覚えましょう。
圧着前には、電線の本数、太さ、スリーブ、圧着マークを声に出して確認するのがおすすめです。小さな声で十分です。「1.6が2本、丸」みたいに言ってから圧着するだけで、思い込みのミスを減らせます。
7. 差込形コネクタによる差込接続部分
差込形コネクタは、入っているように見えても奥まで入っていないことがあります。公式基準でも、コネクタの先端側から心線が見えないもの、下端側から心線が見えるものが欠陥として扱われています。
被覆を剥く量が長すぎると、コネクタの根元から心線が見えてしまいます。反対に短すぎると、奥まで入らず接続が不安定になります。
ストリップゲージに合わせて剥く。差し込んだあとに軽く引く。強く引っ張る必要はありませんが、この確認で気づけるミスは多いです。
8. 器具への結線部分
端子台、配線用遮断器、ランプレセプタクル、露出形コンセント、スイッチ、引掛シーリングなど、器具への結線部分も欠陥が出やすいところです。
ねじ締め端子では、心線をねじで締め付けていない、絶縁被覆を締め付けている、心線が出すぎている、といったミスに注意します。ランプレセプタクルや露出形コンセントでは、ケーブルを台座の引込口に通しているか、ケーブル外装が台座の中に入っているかも見られます。
輪作りでは、右回りに巻くこと、重ね巻きしないこと、ねじの端から心線が大きくはみ出さないこと。ここは手で覚えるしかありません。
ねじなし端子では、引っ張って外れないか、心線が差込口から露出しすぎていないかを確認します。引掛シーリングローゼットは許容がより小さいため、雑に剥くとすぐ目立ちます。
9. 金属管工事部分
金属管工事が出る問題では、構成部品の位置と接続状態を確認します。金属管、ねじなしボックスコネクタ、ボックス、ロックナット、絶縁ブッシングなどが正しい位置にあるか。管を引っ張って外れないか。管とボックスの接続部分に隙間がないか。
ねじなしボックスコネクタやねじなし絶縁ブッシングの止めねじは、頭部がねじ切れるまで締める必要があります。練習では省略しがちな作業ですが、本番で必要な条件なら忘れないようにしたいところです。
ボンド線がある問題では、施工条件どおりに取り付けているかも確認してください。
10. 合成樹脂製可とう電線管工事部分
合成樹脂製可とう電線管を扱う問題では、管、コネクタ、ボックス、ロックナットの位置と接続状態を見ます。
管を引っ張って外れるもの、管とボックスの接続部分に隙間があるものは欠陥につながります。部品の向きや取り付け位置は、作業中に一度確認しておきましょう。
11. 取付枠部分
取付枠も地味に間違えやすい部分です。指定した箇所以外で使っていないか、裏返しにしていないか、器具を引っ張って外れないかを確認します。
器具を1個取り付けるなら中央、2個なら上下、3個なら指定された器具が中央にあるか。公式基準でも、取付枠に配線器具の位置を誤って取り付けたものが欠陥として整理されています。
「あとで直せばいい」と思って仮で付けると、そのまま忘れることがあります。取付枠は、取り付けた時点で一度確認しておくと安心です。
12. その他
最後に、公式基準の「その他」です。支給品以外の材料を使う、不要な工事や余分な工事をする、支給品の既設配線を勝手に変更する、ゴムブッシングの使い方を間違える、器具を破損させる。こうしたものも欠陥につながります。
2026年3月更新の注意資料では、試験開始前の材料確認についても触れられています。材料表と材料箱を照合し、不足や不備があれば材料確認中に申し出る必要があります。試験開始後は、リングスリーブ、差込形コネクタ、端子ねじ以外の交換や追加支給には応じられないとされています。
工具にも注意が必要です。電動工具は使用できません。電動機能をOFFにして使う場合でも不可とされています。他の受験者から工具を借りること、改造工具や自作工具を使うこと、テスタなどの計測器を使うことも避けてください。電線を一時的に束ねるクリップなどは使える場合がありますが、試験終了までには必ず取り外します。
迷ったら、問題文に書いてあることだけをやる。これくらいの意識でちょうどいいです。
見直しは公式番号でチェックする
本番では、普段より視野が狭くなります。だから見直しは、気づいたところから適当に見るより、できるだけ順番を固定しておくほうが確実です(この順番を覚えるのは大変かもしれませんが・・・)。
- 1: 未完成箇所がないか
- 2: 配置、寸法、電線の種類、接続方法が施工条件どおりか
- 3: 誤接続、誤結線がないか
- 4: 電線の色別、器具の極性が合っているか
- 5: 外装、絶縁被覆、心線を傷つけていないか
- 6: リングスリーブと圧着マークが正しいか
- 7: 差込形コネクタの心線位置が適切か
- 8: 器具への結線、ねじ締め、輪作りが適切か
- 9・10: 電線管工事の部品位置と接続状態が正しいか
- 11: 取付枠の位置、向き、器具位置が正しいか
- 12: 余分な工事、ゴムブッシング、器具破損、支給品以外の使用がないか
毎回この順番で見直すと、本番でも迷いません。見直しの時間は最低でも3分、できれば5分は残したいですね。
練習でやるべきこと
候補問題をただ何周も作るだけでは、弱点がぼやけます。練習後に、どこで迷ったかをメモしてください。
圧着マークで迷った。差込形コネクタの剥き寸法が安定しない。ランプレセプタクルの輪作りに時間がかかる。金属管の部品順を忘れる。
こうしたメモが、次の練習メニューになります。
苦手な作業は、候補問題を丸ごと作らなくても練習できます。圧着だけ10回、輪作りだけ10回、複線図だけ毎日1問。部分練習を入れると、完成までの時間も自然に短くなります。
まとめ
電気工事士の技能試験で大切なのは、ただ完成させることではありません。施工条件どおりに、欠陥のない作品を作ることです。
見直すときは、公式PDFの番号に合わせて確認すると迷いにくくなります。1の未完成、2の施工条件違い、3の誤結線、4の色別と極性、5以降の作業品質。番号で追えば、どこまで見たかもわかりやすいです。
最後に、練習の仕上げとして、電気技術者試験センターの公式資料に必ず目を通してください。特に「欠陥の判断基準」と「技能試験の概要と注意すべきポイント」は、試験前に一度ではなく何度か確認しておきたい資料です。
本番で特別なことをする必要はありません。いつもの手順で作り、公式番号に沿って見直す。そこまで練習できていれば、試験会場でも手は動くはずです。