第一種電気工事士と第二種電気工事士試験では技能試験(実技試験)があり、みなさん一生懸命練習されていると思います。ん?もし「練習しなくても大丈夫」と思ってる方がいらっしゃれば・・・、確実に合格するためにはポイントを抑えて練習することをお勧めします。
この記事では、技能試験でやってはいけない欠陥について紹介します。かなりの分量がありますが、欠陥とならないように一通り目を通しておくべきです。
技能試験の欠陥に関する基準は、電気工事士試験を実施する「一般財団法人 電気技術者試験センター」が発行している「技能試験の概要と注意すべきポイント(平成30年1月更新)」に示されています。以下は、上のリンクをたどり、資料(PDF)を見ながら以下を読んでください。欠陥の具体例が8頁以降に写真入りで載っています。
技能試験に必要な工具については『電気工事士: 技能試験に必要な工具・VVFストリッパーは必須』もご覧ください。VVFストリッパーは試験直前に品薄になることもあるので、早目に購入しましょう。
目次
配線図や施工条件を理解し遵守する
A) 部品の配置
問題に書かれた配線図と同じ位置に器具を配置していないと欠陥となります。配線図をよく見て、各器具をどこに置くのかをよく確認してください。配線図で右上に配置されているものは、作品でも右上に配置します。
B) 材料と器具の使用方法
各材料や器具の使用方法で、欠陥にならないように注意すべきポイントは以下です。
- ジョイントボックス(アウトレットボックス)は、打ち抜き済みの穴だけを全て使用すること
- 要するに勝手に穴をあけたらダメ
- 空いてる穴は全て使う(線を出す)
- 施工条件に「打ち抜き済みの穴だけを全て」と記載されている場合、自分で穴をあけてはいけない
- 一か所から余分な電線を引き出したり、使用していない穴が残してはいけない
- ゴムブッシングはボックスの穴の径とゴムブッシングの大きさを合わせる(大きさが違っていると欠陥になる)
- ゴムブッシングを使用しない場合も欠陥になる
- ねじなしボックスコネクタの止めねじの頭部をねじ切ること
- ねじなしボックスコネクタの止めねじは,頭部がねじ切れるまで締め付けること
- 練習の時にはわざわざ止めネジの頭をねじ切るところまですることは少ないと思います。本番では忘れないようにねじ切りましょう。
- ランプレセプタクルのケーブル引き込みは、台座の下部から引き込むこと(台座の上からから結線すると欠陥)。
C) 電線の色別について
施工条件に「電線の色別(絶縁被膜の色)は次による。」と指定されている部分は指定通りにします。
- 電源からの接地側電線は、すべて白色を使用
- 電源からの点滅器までの非接地側電線は、すべて黒色を使用
- 接地線(アース線)は緑色を使用
など、この辺りはいつもと同じ色使いです。
D) 配線方法について
変圧器代用の端子台は、配線図に従って行うこと
端子台には複数のねじと端子がありますが、使用する場所(配線の並び)は配線図と同じようにしないと欠陥になります。
16頁の2つの写真の違いがわかりますか?
15頁下部に配線図があり、左からT1のU, V, T2のU,Vと並んでいて、T1-VとT2のUが結線されています。
16頁の左の写真(適切)では、左側の端子台の左側から2番目のねじ・端子にKIP線が2本接続されています。16頁の右の写真(欠陥の例)では、端子台上側のKIP線の順序と、下側のVVF線の接続順序が配線図と異なっています。
電気的には同じでも欠陥となるので注意してください。
E) 電線相互の接続について
i) ジョイントボックスを経由する線は、その部分ですべて接続箇所を設ける
ジョイントボックスを経由する線は、すべて差込形コネクタかリングスリーブを使って接続してください。17頁上の写真では、下の穴から入って配線が接続部分を設けずに右上の穴に出ていくので欠陥です。
単位作業を的確に行う(17頁)
A) 電線の取り扱い
i) 電線に傷をつけない(18頁の写真)
以下が欠陥になります。
- 心線が折れる程度の傷
- 電線を折り曲げたときに心線が露出するぐらいのシースの絶縁被膜の傷
- ケーブルを折り曲げたときに中の絶縁被膜が見えるぐらいのシースの損傷
「表面に傷がついている程度のものについては欠陥と致しません」とあるように、擦り傷程度では欠陥にはなりません。
ii) 余分にはぎ取らない(19頁)
右側の写真にあるように、引掛シーリングローゼットの場合、絶縁被膜が5mm以上露出していると欠陥になります。むき過ぎたときは露出部分を減らすようにシースをずらしましょう。それでもダメな場合は一旦心線を器具からはずし、心線の先端を少しカットします。
ランプレセプタクルの場合、ケーブル外装(シース)が台座の中に入るようにします。
B) 電線相互の接続(20頁)
B-1) リングスリーブ接続
i) 「リングスリーブの選択」
リングスリーブの種類には小、中、大があります。また、工具には刻印(ダイス)には○、小、中、大があります(ホーザンのP-737など、工具の種類によっては「大」がないのもあります)
心線の径と接続する本数に応じて、使用すべきリングスリーブの種類と、使用すべき圧着工具のダイス(圧着する歯の部分で、リングスリーブに刻印がつくようになっている)が決まっています。
間違えやすいのは、刻印を○にするか、小にするかですが組み合わせの数が少ないので覚えましょう。
○を使うケース
- 心線の径がφ1.6mm(直径1.6mm)または2.0mm^2(断面積2.0平方ミリメートル)を2本接続する場合
- 心線の径がφ1.6mm(直径1.6mm)を1本と0.75mm^2(断面積0.75平方ミリメートル)1本とを接続する場合
- 心線の径がφ1.6mm(直径1.6mm)を2本と0.75mm^2(断面積0.75平方ミリメートル)1本とを接続する場合
ii) 「圧着工具と刻印」
上で述べたように、リングスリーブに正しい刻印を付ける必要があります。
古い工具で刻印がはっきり見えないものや、圧着工具の柄の色が黄色ではないものを使ったら刻印が正しい工具を使ったことにならないので、欠陥となります。
iii) 「リングスリーブの破損等」
使用するダイスを間違えたら、電線を切ってやりなします。一つのリングスリーブを2回圧着すると欠陥です。あと、絶縁被膜のリングスリーブで圧着するのも欠陥です(リングスリーブに絶縁被膜がかんではいけない)
iv) 「絶縁性能の維持」
以下が欠陥になります。
- リングスリーブ上端から心線が長く出たまま
- 絶縁被膜を向き過ぎて、リングスリーブ下端から心線が10mm以上見える
- 外装(シース)のはぎ取りが20mm以下と不足している
- 一部の心線がリングスリーブ上側から見えない
B-2) 差込形コネクタによる接続
i) 「所定の深さに心線を挿入」
心線をコネクタの奥に突き当たるまで挿入してください。コネクタの先端からはっきり見えるように差し込まないと欠陥になります。
ii) 「電線挿入口からの心線の露出(下端から心線が見えるもの)」
絶縁被膜をむいて心線をコネクタに差し込みますが、被膜をむき過ぎてコネクタの下端から心線が見えると欠陥になります(絶縁性能が維持できない)。
コネクタにはストリップゲージがついているので、その長さに合わせて絶縁被膜をむくと、心線をコネクタの奥に当たるまで差し込んでも、下端から心線が見えることはありません。
C) 電線と器具との結線
C-1) ねじ締め端子の器具への結線部分(端子台)
i) 「心線の確実な締め付け」
心線が座金で保持されるようにねじを締めます。電線を手で軽く引っ張っても外れない程度に締めます。あまり強く締めすぎて器具が破損すると欠陥になるので、ほどほどの力でねじを締めればいいです。
ii) 「心線の露出」
- 心線の根本が器具本体から露出させないようにしてください。露出の程度は以下に収めてください。
・低圧側: 5mm未満
・高圧側: 20mm未満 - 絶縁被膜が座金に噛み込まないように注意してください。
C-1) ねじ締め端子の器具への結線部分(端子台以外)
i) 配線用遮断器等への結線について
実物の配線用遮断器が支給された場合、器具本体から心線が5mm以上露出しないようにしてください。
ii) ランプレセプタクルへの結線で注意すべき点
- 心線がぐらつかないようにねじをしっかり締めてください。ただし、必要以上に強い力で締め付けて破損すると欠陥になります。試験開始後は器具の交換はできません。
- 心線がねじの端から5mm以上露出しないようにしてください。
iii) 巻付け方法の考え方
- 輪の巻き付けを不足させない(3/4周以下にならないよう)ように、また、輪の一部が重ならないようにしないといけません。絶縁被膜をむく量は練習でしっかり把握しましょう。
- 輪が右回りであること。ねじを締めるとき、輪が広がらない向きに巻き付けます。
- 輪の外周がねじのあたまより大きくはみ出さないようにします
- 被膜をねじにかまないように
- 被膜をむきすぎないように
- これは、欠陥になるはみ出し量が書かれていませんが、ねじから2~3mmは心線が見えても大丈夫だと思います。
iv) 器具のカバーについて
カバーがしまるように作業してください。絶縁被膜が長すぎてカバーがしまらないと欠陥です。
C-3) ねじなし端子の器具への結線部分
i) 「ストリップゲージ」
心線を挿入する器具の場合、挿入深さをしるため、器具の外部に目盛(ストリップゲージ)があります。この長さに合わせて絶縁被膜をカットすると、的確な差し込みができるので、必ずストリップゲージを使ってください。
ii) 挿入のやり直し
コンセントや点滅器(スイッチ)の裏側には、電線を抜くためにドライバーを差し込む場所があります。電線を器具から抜くときは、力任せにはひっぱらず、必ずドライバー等をそこに差し込んで抜いてください。
なお、ドライバー等を必要以上に強く差し込むと器具が破損することがあり、その場合交換してもらえず、欠陥になるので、力加減には注意してください。
iii) 「心線の露出」
ストリップゲージより長く絶縁被膜をむき、心線を差し込んだ根本部分で心線が露出すること欠陥となるので、必ずストリップゲージと同じ寸法で絶縁被膜をむきます。
- 引掛シーリングローゼットの結線部では、心線が1mm以上露出しないように
- 引掛シーリングローゼット以外の結線部では、心線が2mm以上露出しないように(タンブラスイッチ、コンセント、パイロットランプ)
C-4) ボンド線の接地用端子への取り付け(34頁)
i) ボンド線が接地用端子に正しく挿入してください
ii) ボンド線がねじで確実に締めて付けてください
- 巻き付けるタイプの接地用端子の場合、巻き付け(右巻きでも左巻きでも)は欠陥にはなりません。
- 巻き付けるタイプではない接地用端子の場合、ねじから先で折れ曲がっても欠陥にはなりませんが、接地用端子に挿入不足の場合欠陥となります。
C-5) ボンド線のアウトレットボックスへの取り付け(35頁)
以下は欠陥になります。
- i) 正しいビス穴以外に取り付け
- ii) ボックス外部に取り付け
- iii) ブッシング、ロックアットで固定
- ビスを力強く締め付けてねじ穴を破損すると欠陥
D) 電線管工事
D-1) 金属管の接続
- ねじなしボックスコネクタのねじの頭をねじ切らないと欠陥
- i) 電線が正しく電線管に入れていないと欠陥
- ii) 構成部品が正しい位置に使用されていること
ロックナットが外部で使われているなど、 - iii) 構成部品により電線管とボックスが確実に接続されていること
- ボックスと管の接続がゆるく、すきまがあると欠陥
- ボックスコネクタと管との未接続や引っ張って外れると欠陥
- 絶縁ブッシングが外れている
D-2) 合成樹脂可とう電線管の接続
金属管の接続と同様です(ねじがないので、ねじの頭をねじ切る必要はない)。
E) 取付枠部分
取付枠にはスイッチやコンセントを付ける位置が3か所あります。
その枠に付ける個数によって、取り付ける位置が指定される場合、指定された位置以外に取り付けると欠陥になります。
- 取り付ける個数が1個:中央に取り付ける
- 取り付ける個数が2個:上と下に取り付ける(中央に付けると欠陥)
- 3個の場合:イロハで指定された順番と異なると欠陥
F) その他の注意事項
- i) 支給した材料以外の材料をしていしたもの
- 受験者が持ち込んだ材料を使用するのは禁止です
- 以下のような、不要な工事、余分な工事を行うと欠陥
- ランプレセプタクル等の取付用ビス穴から電線を通したもの
- 露出形コンセントの送り端子に電線を結線したもの
- iii) 既設配線を変更または取り除いたもの
- 押しボタンスイッチ等で、結線した状態で支給された既設配線を外して配線したもの
- iv) 器具を破損させたもの
- ランプレセプタクル等のねじの頭を切断(金属管工事のねじ頭のねじ切りは除く)
- ねじなし端子器具へ挿入した電線をはずすときに器具を破損したもの
- 注) ランプレセプタクルの台座など欠けやすい部分の欠けについては欠陥とはしない
41頁に、技能試験における輪作りのポイントが解説されています。
その他
ざっと書かれている内容を少しわかりやすい言葉で書いたつもりですが、技能試験は練習が必要です。金属管工事では、ロックナットの取り付けやねじの頭をねじ切るなど、正しく取り扱っていないと欠陥となるので、十分に練習しましょう。
それでは幸運を祈ります。